東京都国分寺市西元町一丁目に逓信住宅という一角(JR中央線国分寺と西国分寺間の西国分寺寄り、今はなき国鉄中央鉄道学園と多喜窪通りを挟んだ南側、現在は武蔵国分寺公園)がありました。郵政(逓信)省職員の住宅地だったと思います。国分寺駅から行こうと思うと途中谷間のような急坂を上り下りしなければならずちょっと距離があり、西国分寺駅からは途中府中街道を挟みますがこちらからの方が近いです。当時友人が小金井市で古道具屋をやっていて、其処に遊びに行った帰り道バイクでこの付近を通りかかった時、何か独特な雰囲気に引き寄せられ、(部外者立ち入り禁止という立て看板があったのですが)立ち寄ってみました(当時はオートバイ=ホンダ・ゴリラで駆け回っていたんですよね。あ〜、懐かしい。(笑))。
さて、一歩この逓信住宅の敷地に入った途端、えもいわれぬ懐かしさがこみ上げてきました。小学生時代、私は隣の小金井市に住んでいましたが、その頃毎日見たのと同じような風景が逓信住宅にそのまま残っていたのです。家と家との間の小径は小学校への通学路を彷彿とさせてくれました。郷愁を感じさせるこの町並みを見た瞬間、まさにタイムスリップして当時に戻ったかのようで、俄には信じられませんでした。部外者の分際で、住人の方には本当に申し訳ないと思いつつもこの一角を散策してみました。まさに至福の空間でしたね。広い砂利道、生い茂った木々や鬱蒼とした野原、古い簡素な建物、当時既に他では殆ど消滅していた電球の街灯、井戸の跡、集会所(子供の頃、地区主催の行事の度に行った公民館そのもの)、共同浴場など 古き佳き時代を思わせるもので満ち溢れていました。いや、寧ろそういった懐かしい町並みからここに住んでいる人たちの温もりのようなものを感じていたのかも知れません。木造モルタル造りの無表情な家が並ぶ町の、ある種の冷たさとは何と違うことでしょうか。ここを発見してから何度となく行っては懐かしいノスタルジックな気分に浸っていたのです。武蔵国分寺跡(史跡)への近道にもなっていて、時々そちらへ行く人たちの姿も見かけました。
ところがつい最近行ってみるとこの懐かしい住宅地は跡形もなく消え去っていました。前世紀末、即ち1998〜99年に本格的に取り壊されたようです。 国鉄精算事業の一環として払い下げられた中央鉄道学園跡地の一部がマンションになってしまい、多喜窪通りを挟んだこの一角は更地となり公園造成工事をやっていました。時代の流れとはいえ、何か大きなものが失われてしまいました。勿論、既に相当古くなってしまった建物に住まわれていた住民の方々にとってはとても快適な空間とは言えなかったのでしょうけれど。生活の匂いがあまり感じられない無機質なマンション群、取って付けたような人工的な公園、街の風景もどんどんつまらなくなっていくのが残念です。ただ、高価な成金分譲マンションではなく都営の公園として残ったのが唯一の救いでしょうか。この公園は面積が広く、よく整備されていると思いますが、嘗ての逓信住宅の面影は一切ありません。勿論これは単なるセンチメンタリズムに過ぎないのでしょうけれど。因みに現在橋が架かっている場所は、ほぼ住宅地の中央にあった大通り入り口付近に該当すると思います。元々もっと西側の府中街道寄りにあった国分寺市立第四小学校はこの跡地(公園)の西北端に移転しています。
私の個人的な思い出として、もう見ることの出来ない懐かしい風景の秘蔵写真を掲載しましたので、ご覧いただければと思います。今になって思えば、これらの写真を撮影しておいて本当によかったと思います。特にこれらの写真を撮影した1989年(取り壊しの約10年前)当時にここに住んでおられた方々に見ていただければ嬉しいです。私が子供だった1970年頃の東京都多摩地区の街並はこんな感じの場所が多かったのです。小学校の高学年になって間もない頃、-----恐らく1972年頃ですが-----世の中の事は何も知らない癖に何故か生意気にも「今って懐かしくていい時代だなぁ」と感じた事を鮮明に覚えています。本当に変な小学生でしたね。(笑) その頃住んでいた家も既に消え去り、全ては私の思い出の中にしか存在しません。実はその後中学一年の夏休みに私は多摩西部の某市に引っ越したのですが、何の因果か引っ越した先の中学校の同じクラスに逓信住宅の直ぐ傍にあった国分寺市立第四小学校の出身者がおり、その彼に誘われて中央鉄道学園の学園祭(大きな車庫の中に新幹線0系の運転台があったり、細かく分かれた狭い教室にジャック式の旧型電話交換機や実際に使われている鉄道用の信号機が実働状態で展示されていたり、それはそれは楽しい催しでした)に遊びに来た折りにここに来た事があるのですが、その時にはまだまだ一つの「街」としての賑わいがありました。今はなき、国分寺駅西側の花沢陸橋のすぐ傍にあった電子部品ショップ「サンエイパーツセンター」(その後、駅南西側にあったソニーの国分寺営業所近くに建った新しいビルに移転したものの2001年頃に廃業)に足繁く通ったのも懐かしい想い出です(ラジオの部品や、当時まだ珍しかったニッカド電池「パナニカ」を買ったりしました。名物店員?だったおばさんはまだ健在なのでしょうか?)。しかしながらこれらの写真を撮影した頃には既に売店や理容店はなく、昔あった家屋も半分以上がなくなっていました。撮影は1989年であり、あとわずかで2010年になろうとする現在とは違って、当時は雰囲気的に昔からの連続性がまだ何とか残っていた最後の時代だったような気がします。今、改めて考えてみると、2000年になる少し前くらいまではまだこういった古い物が色々残っていたんですね。今となっては既に叶わぬ夢となってしまいましたが、願わくばもう一度逓信住宅を隅から隅までゆっくり歩いてみたいです。そんな意味で、これらの写真をご覧になって少しでもその気分を味わっていただければWebmasterとしては幸甚に存じます。クリックすると大きな写真が表示されます。1979年の国分寺駅の写真もこちらに掲載しました。中央鉄道学園の学園祭の写真はこちら。
尚、私はプロの写真家ではありませんので特に制限なく高解像度で公開しておりますが、構図の不備等の専門的な突っ込みはご容赦くださいませ。(笑) 出来うる限り公開を続けますので今後ともどうぞよろしくご贔屓くだされば幸甚です。
尚、逓信住宅に実際に住んでいらした方のホームページに、この住宅についての詳しい記述がありますので是非ご覧下さい。(Ben Marchさんのサイトでしたが、サイトを閉じられたようで現在リンク切れですのでご了承ください。)
また、武蔵国分寺公園(旧逓信住宅)の南側にある真姿の池湧水を毎日観測されているブログ、真姿の泉 TODAY
〜野川源流・真姿の池湧水観測〜 も是非ご覧下さい。
【2013年03月27日追記】 沢山の方々にご覧頂き、光栄の至りです。その場に実際に居るような雰囲気を味わって頂きたく、高解像度画像に入れ替えました。
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1989年10月10日(火)午後3時頃撮影 (Nikon FE/35mmF2/FUJICHROME100/EPSON GT-X750)
小さな公園(東を望む)
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木々の間に顔を出す街灯
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家と家の間の小径 1(北を望む)
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砂利道 (東を望む)
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家と家の間の小径 2(北を望む)
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家と家の間の小径 3(北を望む)
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家と家の間の小径 4(南を望む)
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家と家の間の小径 5(北を望む)
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家と木とベンチ(北東を望む)
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広い砂利道 1(東を望む)
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広い砂利道 2(東南を望む)
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中央の大通り南側より北を望む
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家と家の間の小径 6(東を望む)
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家と家の間の小径 7(東を望む)
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集会所 (東を望む)
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中央の大通り北側より南を望む
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住宅地東端の道 (南を望む)
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住宅跡地より北東を望む(左側に見えるのは中央鉄道学園の建物です)
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家と家の間の小径 8(南を望む)
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家と家の間の小径 9(北を望む)
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陽の当たる家(東南を望む)
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集会所(長い間使われていない様です)
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共同浴場裏の資材置き場(東を望む)
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家がなくなった跡(南を望む)
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中央の大通り南端から北東を望む
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● 同日コダクロームで撮影した分を追加しました。
(Nikon FE/35mmF2&43-86mm Zoom Nikkor/Kodacrome64/EPSON GT-X750) 2008,04,16→2013,03,27
広い砂利道3(東を望む) | 中央大通りの街灯(南東を望む) | 広い砂利道4(東を望む) |
中央大通り南側より北を望む2 | 家と家の間の小径6-2(東を望む) | 貯水塔(北西を望む) |
中央大通り南側より北を望む3 |
中央大通り北側より南を望む2 |
集会所(北東を望む) |
小径(西を望む) |
集会所・浴場付近から北側を望む |
集会所(東を望む) |
集会所 | 集会所北側の小径(東を望む) | 案内板(東を望む) |
多喜窪通りに面した小径 (中央大通り入り口付近から国分寺駅方面(東側)を望む) |
浴場と薪(西を望む) | 集会所 |
小径(西を望む) | 小径(東を望む) | 家と家の間の小径10(北を望む) |
辻の街灯 | 中央大通りから集会所(北)を望む | 小さな公園と小径(東を望む) |
懐かしい街灯1(最西側消防署付近から東南を望む) |
懐かしい街灯2(最西側消防署付近から東を望む) |
家と家の間の小径11(北を望む) |