このページでは自分が持っているフォノカートリッジを独断と偏見を以て評価しています。 カートリッジは、取り付けるヘッドシェル、リード線、アーム、ターンテーブル、ヘッドアンプ、トランス、フォノイコライザーアンプなどで大幅に音が変わります。このインプレッションはあくまで私の再生装置による結果であり、併せて自分の音の好みも反映していることもあり、全ての環境に当てはまるわけではない(別の装置では全く違う結果になる)事を予めご了承の上で、ひとつの例としてお読み下されば幸甚です。掲載したカートリッジは一部を除きアナログ現役時代に新品で購入したものです。交換針が入手できない物もあり、ベストコンディションでの再生音ではないかも知れませんので、その辺は割り引いてご判断下さい。
メーカー純正の交換針が入手できなくても、互換針の供給元の一つであるJICOが多数取り揃えて直接通信販売をやっています。扱い機種も多く、特にSP用針(3ミル)が豊富なのは本当に素晴らしいと思います。今後とも供給を続けて貰えるようにアナログユーザーの方はドンドン利用しましょう。通販サイトはこちら(私は別にJICOの回し者ではありませんので念のため)。JICOやナガオカの互換針はオリジナルの針に及ばないなどといわれる事がありますが、私に言わせればそんな物言いなど全くのナンセンスです。アナログ全盛期ならいざ知らず、今は全く状況が違いますから、カートリッジ製造元のオリジナル交換針が既に入手出来ない以上、無い物ねだり以外の何物でもありません。既にアナログディスクがレガシーメディアとなって久しく極限られた需要しかない今日、考え得る最高品質の互換針(しかもオリジナルでは考えられなかったSAS(ラインコンタクト)針を装着した高級バージョンまである)を供給してくれているという事だけでもありがたい筈なのですが。互換針が気に入らなければ、文句を言わずキッパリと諦めましょう。
数年前の一時期、アナログ復権か?などといわれたこともありましたが、テクニクスのロングセラーターンテーブル SL-1200 シリーズが既に生産終了したことに象徴されるように、アナログ関連の需要は最近特に落ちているようで、今まで何とか生きながらえてきたカートリッジや交換針も突然生産終了になる可能性が大いにあります。もし欲しいカートリッジがあるなら、在庫があるうちに入手しておいた方がよいと思われます。
尚、当サイトの評価記事は未来永劫確定したものではなく、その後の環境変化によって大幅に変更される可能性が大いにあります。まあ、WEB MASTER 本人の環境も一定ではありませんので、もし当サイトを愛好して下さる奇特な方がおられましたら、定期的に新しいサイト情報に更新して頂ければ幸甚でございます。m(_ _)m
★最近最大のトピック★
MMカートリッジのオリジネーターであるアメリカ・シュアー社が2018年5月1日、フォノカートリッジの生産終了を発表しました(英文)。交換針も全て生産終了です。アナログ復活という声もありますが何といっても一部の熱心なマニアの趣味以上の規模にはならず、他社のフォノカートリッジやアクセサリー類も大幅に値上げされている現状をみると利益が出る程には売れていないと思われます(最近M44シリーズが量販店のオーディオコーナーで8000円位になっていて驚きました)。残念ですがこれも時代の流れで仕方がないのでしょう。寧ろこれまで生産を継続してくれた事に感謝です。シュアーのカートリッジは交換針も含めて新品の流通在庫を除いては中古でしか入手できなくなる為未使用品が高騰することも予想されます。シュアーのカートリッジをお持ちの方はJICOなどの互換針で末永く使ってあげてください。(2018年6月3日追記)
【追記】 JICOのSAS針は残念ながら2016年2月19日で販売が終了しました。SASに代表されるラインコンタクト針はカッティングレースの針の形状に最も近く、内周歪が極小で大変優れたスタイラスです。一部のマニアは「音が細い」と批判的でしたが私は決してそうは感じませんでしたし、SHURE V15 TYPE3用に購入したSAS針は何といってもそのクリーンで変な味付けのない音質が他には代え難いものでした。巷間アナログ復活などと喧伝されてはいますが、結局のところ一部の熱狂的な愛好家のみのものであって需要の絶対数としては既存の生産品を縮小せざるを得ない程度なのでしょう。JICOのこれまでの企業努力に心から感謝するとともに、同社がアナウンスするように「新しいSAS針」が実現できるのであれば大いに期待したいと思います。
【更に追記】 JICOは2016年7月21日に新しいSAS針である neo SAS を発売するそうです。カンチレバーにはサファイア(Sモデル)とルビー(Rモデル)が採用されるので値段は高くなりそうですが。しかもMCカートリッジも開発中との事で、大いに期待しています。商品ラインナップは縮小あるのみだと思っていましたが、JICOさんの頑張りには本当に頭が下がります。今後とも応援していきたいと思います。(2016年7月13日追記)
【また更に追記】 neo SAS針はサファイアが2万円前後、ルビーは4万円前後と従来のSASに比べてかなり高くなりましたが、他メーカーの製品でもカートリッジは軒並み値上げされましたので、需要が低迷しているこのご時世では致し方ないかと思います。私も今使っているSASの寿命が来たらいずれはneo SAS交換針を試してみたいと思っております。(2017年1月27日追記)
凡例:(D/N)= 本体生産終了/交換針生産終了 (D/A) =
本体生産終了/交換針(互換針含む)入手可 (C) = 現行品 (?/?) =
本体、交換針とも状況不明。
(D=Discontinued, N=Not Available, A=Available, C=Continue)
audio-technica
AT10G AT7V AT-ML150/OCC AT102P AT-F3II AT-MONO3/SP AT-3M AT33LTD
SHURE
M44-7 M44GX M78S SC35C M92E M95HE V15TypeIII V15TypeIV
Technics
EPC-U25H EPC-205C-II EPC-205CMKIII
Victor (JVC)
Z-1E U-2 MC-100E MC-2E
VM (MM) 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 2.0g (1.5~2.5) 【※ フォノイコライザーを変更して試聴し評価が変わったので書き換えました】 シェル付きで実売価格が6000円程度(既に生産終了)なので抜群に安く、まさに入門用として最適である。私の環境でディフォルトの状態(シェルやリード線等はオリジナルのまま)で聴いたが、本機の音質は上位機種に決して劣るものではなく、ほんの僅かに高域寄りに感じるところはあるものの非常に帯域バランスが良く鋭い切れ込みもある。全体的には綺麗且つ上品なハイスピードサウンドであるが、ダイナミックなパワーも兼ね備えており、出すべきものはちゃんと出すといった感じだ。接合丸針というイメージから来る雑な感じは全くなく内周でも歪まないし、高音質録音のレコードにも余裕で対応してリアルな音を出してくれるのは実に素晴らしい。音場も広く持ち味の明るくクリーンな音がその良さを発揮し、カッティングレベルが大きく音が荒れ気味の EP(ドーナツ)盤を綺麗に聴かせてくれる。テクニカ独自の VM 方式の良さが遺憾なく発揮されている安価で非常に良質なカートリッジだが廃番になってしまったのは惜しい。こういう素晴らしいカートリッジは生産を継続して欲しかったが、せめて交換針だけは廃番にせず末永く供給して頂きたいと思う。 更に、コスモテクノ(→ C.E.C.)の78rpm用交換針(CTN10SP)があるのは実に有り難いことである。 テクニカはフォノカートリッジ製品を大幅に整理したので緑色、赤色バージョンともに生産終了。交換針は未だ入手可能である。(2013,4,18追記) |
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VM (MM) 型 無垢楕円針 標準針圧 2.0g (1.75~2.25) 残念ながら本機もとうとう生産終了になってしまった。これでテクニカの VM は 本機 7V はごく僅かに繊細さに欠ける印象はあるもののパワーがあり溌剌とした音で音楽を楽しく聴かせてくれる。このクラスで無垢楕円ダイヤ針はコストパフォーマンス(性能対価格比)が高く、非常にお買い得であった(ほぼ同じクラスのオルトフォン 2M RED は接合針)。アナログの良さを味わおうとすると、どうしても最低ラインがこの辺になると思う。ただ、テクニカの VM は機械構造的に多少弱い部分があって(プラスチック同士を噛ませるので)、本機の場合、使っているうちに針と本体の嵌合が緩くなってしまって最終的にセロテープ等で留めないと安定しなくなったので買い換えた(ダメ元で修理に出してみたが結局新品交換となるようで、値段も新品を買うのと大して変わらなかったので買い換えた次第である)。上位機種である AT9V には AT7V 用の交換針が使用可能である。勿論互換品となるので 9V <マイクロリニア/ラインコンタクト針>の初期性能にはならないが問題なく使える(実機で動作確認済み)。 交換針も生産終了。(2012,5,25追記) 後継機 AT5V が発売されたようです。交換針( ATN5V )の取扱説明書には「 ATV シリーズの共通交換針」と書かれているので 7V および 9V にも使えるはずです。接合円錐針なのでグレードダウンしてしまいますが、これは朗報。(2013,6,20追記) |
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VM (MM) 型 無垢 ML(マイクロリニア)針 標準針圧 1.25g (1.0~1.5) 明るく活気があり音に芯があっていかにもハイファイ的な鳴り方をする。ML 針なのでトレース能力が高く複雑な溝や内周でも歪まず、安心して聴いていられる。音味やセパレーションの良さなど VM 方式の良さが発揮されていると感ずる。セラミックベースでシェルにしっかり取り付けられるのも良い点だが、こちらも上欄の AT7V と同様、構造的に少し弱い面があって、何度かヘッドシェルを付け替えているうちに出力ピンが出ている台座ごと本体からはずれてしまった(特に力を入れ過ぎたわけではないのだが)。運良く断線していなかったので、取り敢えず元の位置に戻して使っている。テクニカの VM 型は一度取り付けたら成る可くヘッドシェルの交換はしない方がよいように思う。 |
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VM (MM) 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 1.25g (1.0~1.5) 円錐針の T4P タイプで、ユニバーサルアーム用取り付けアダプターつき。このアダプターが曲者で、シェルの天井にアダプターの背中が水平に密着せず、僅かに出力ピン側が浮いてしまう(カートリッジ前方が僅かに上がってしまう状態になる)。取り敢えずは普通のシェルにも取り付けることができる「間に合わせ用」と考えた方がよい感じだ。音のバランスはよくとれているが低域が少し強めに出る。リニアトラッキングターンテーブル普及機の交換用として使えば、迫力が増していい感じで鳴ってくれると思う。特に欠点らしい欠点もないのでコストパフォ-マンスは高い。ただ針先の嵌合が必要以上に堅く、しかも指で掴みにくい形状なので交換時に誤ってカンチレバーを折ってしまいそうになる。慣れるまでは注意が必要。本体、交換針とも生産終了している。 |
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MC 型 無垢楕円針 標準針圧 1.5g (1.25~1.75)
実売価格 後継機 AT-F3III が 2010年に発売されました。ユーザーの絶対数が少ないから儲けは余り出ないんでしょうが、アナログの火を絶やさないオーディオ・テクニカ社の姿勢には本当に頭が下がります。(2010.4.26追記) その AT-F3III も生産終了で入手不可。交換針は AT-F7 か他の MC カートリッジと現品交換。(2012,5,25追記) |
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MC 型 コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 5g (3~7) 78rpm 再生専用カートリッジ。こういう需要の少ない製品を現在でも生産し続ける同社の姿勢は大いに評価すべきだと思う。ベストセラー AT33 シリーズと同じボディーデザインで振動系を 78rpm 用に新しく設計した製品。針先の径は 2.5 ミルなので、戦後盤(規格化された1958年以降)なら問題ないが、戦前盤ではレコード盤のノイズを拾いやすい傾向があるので、針がもう少し太め( 3.5~4 ミルくらい)だったらと思う。繊細な表現をするカートリッジだけにこの点は惜しい。音の線は若干細目だが芯のしっかりした音を出し、解像度も良い。また、標準針圧が 5g ということもあり盤の反りには強く、反ってしまった盤でもトレースが安定しているのは優秀な振動系の故か、非常に素晴らしいと思う。アウトプットピンはステレオ用と同様4本出ているが、基本構造がモノーラルなので、内部配線をただ単純に左右に分岐してあるだけと思われる。どちらか片側だけの使用を推奨したい(当方の場合、ステレオで繋ぐとアースループでハムが出てしまって使い物にならなかった)。 余談だが、私はこのカートリッジの針先径を某国内サイトの記述を信用して長い間 3mil だと思い込んでいた。国内の製品カタログには針先径の記載は一切ないが、海外向けのデータシートには Stylus: Highly polished special conical 2.5 mil diamond とハッキリ書いてある。海外向けには 78rpm 盤を再生する際に非常に重要な情報である針先径の情報が載っているのに、何故日本のカタログに記載がないのか不思議でならない。国内ユーザーは軽視されているのだろうかと疑いたくなる。この辺の情報開示に関しては早急に改善して頂きたいと思う。 |
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AT-3M (D/N) MM 型 コニカル(円錐)針 標準針圧 2.5g (1~3.5) 同社の専売特許 VM 方式以前のかなり古いカートリッジで MM 型である。完全なるモノーラル仕様で縦方向の振動は感知しない(針は縦方向にも動く)。元々は、ステレオレコードをモノーラルで出力するためのカートリッジである。LR各チャンネルを内部でショートしてパラで分岐してある似非モノーラルカートリッジとは異なり、アースループに由来するハムノイズは全く発生しないのは実に有り難い。0.7mil のモノラルLP用針(青いノブ)と 2.5mil のSP(78rpm)用針(白いノブで赤字でSPと刻印してある)が用意されていた(現在交換針は両方とも入手不可能)。交換針は初期のものは無垢で、後期のものは接合針に変更されている。 本機の音は色つやがあって非常に心地のよいもので、解像力も不足はない。ステレオ-モノーラル変換はもとより、往時のモノーラルレコードや78rpm盤を再生するにも極めて優秀なパフォーマンスを示す。メーカーの説明によると、本機は振動系自体はステレオカートリッジ同様に縦方向にも追従するけれども、縦方向の振動は出力されないため、ステレオカートリッジの出力ピンを左右ショートさせる方式とは異なり著しい高音質が得られるという。果たせるかなその説明通り、他の似非モノーラルカートリッジとは一線を画していることは本機の音を聴けば直ぐに理解できる。若い頃に私が仕事をした某レコード会社でも78rpm盤の復刻の制作に使っていて、業務用としても標準品種であるといえよう。スタジオでは特注で4milまでの針が用意されており盤の状態によって使い分けていたが、青ノブのモノLP用共々現在交換針が供給されていない事は非常に残念である。多少高価でもいいので、オーディオ・テクニカさんには是非とも交換針を再生産して頂ければと切に思う。もしくは、JICOさん、ナガオカさんで生産して頂けないだろうか。 |
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MC 型 無垢 ML(マイクロリニア)針 標準針圧 1.8g (1.6~2.0) 33シリーズの音味(特に高域)を嫌う人もいるが、私の現在一番好きなカートリッジでリファレンス。他にもカートリッジは持っているが、結局このカートリッジに落ち着いてしまう。ワイドレンジで明るく繊細、分解能が高い。同時に腰の強さもありくっきりとした輪郭を描く。音場も広く余裕を感じさせる鳴りっぷりがいい。ML 針搭載なのでトレース能力が非常に高く、内周でも歪まず、複雑な音溝もすんなりトレースする。経験上、このカートリッジで歪んでしまう盤は諦めるしかない。針圧は軽すぎず重すぎず使いやすい値で神経質なところがないのも美点で、構造的にも音質的にもバランスが整っている優秀なカートリッジだと思う。AT33 シリーズはテクニカのロングセラーモデルで、そのノウハウの蓄積には相当なものがあると感ずる。これはレギュラー品(AT33ML)の限定バージョン(LTDはリミテッドの略)だが、その後レギュラー品は生産終了になり何世代かの限定バージョンを経て、2010年11月19日に発売された AT33PTG/II (プレステージ)に至る。LTD は1995年の製品だが、2011年現在でも何の問題もなく動作しており、未だにバリバリの現役だ。 |
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VM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 4g コスモテクノ社(嘗てはテクニクスのSL-1200シリーズと同系デザインのDJターンテーブルやミキサーなどを発売していたが、現在はそれらから撤退してLEDが主要事業になっている)が発売していた78rpm盤再生用カートリッジで、OEM製品のためボディーにはオーディオ・テクニカのロゴはプリントされていないがAT10Gと同じものである。テクニクスの純正品によく似たヘッドシェルにマウントされているので新たにヘッドシェルを購入する必要はない。本機の交換針CTN-10SPは勿論AT10Gにも使えるし、逆にATN-10Gを本機に取り付ければステレオLP用カートリッジとしても使う事が出来る。交換針CTN-10SPはおそらくコスモテクノ社の発注でオーディオ・テクニカ社が生産したものだろう。針は78rpm用の太いものが付いている(おそらく2.5ミルではないかと思われる)が、ボディーはステレオのままなのでモノーラルで再生する場合はアンプのモノーラルモードを使ったりLRのどちらか片側で再生するなどの工夫が必要だ。LRをパラ接続していないのでアースループ由来のハムの心配はない。標準針圧4gというのは反った盤にもある程度対応してくれる重さなので非常にありがたい。左の画像を見て頂ければわかる通りカンチレバーは根元から先端まで黒いがneu VV-44のようにゴムのようなものはコーティングされていない。 同じMM型のカテゴリーで比較してみると明るい音のシュアーや総合的にバランスの良いオルトフォンとも少し違って非常にクリアでスッキリしており細かい音も良く出してくれる。敢えて譬えれば若干寒色系に寄っているといえるだろうか。それゆえ、鉄針で荒れた盤の再生は苦手で、ミントコンディションのレコード盤に使えば本機の持つ長所を遺憾なく発揮してくれると思う。数少ない78rpm用カートリッジの貴重な1台である。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 3g (1.5~3.0)
M 44 シリーズは、一時期生産中止になって新たに M44 ○Xに移行したのだが DJ の要望で復活した。もともと古い設計ということもあり、レンジも決して広くないし現代的な細やかさを求める方向性ではないが、明るい音調で馬力があって、このキャラクターとピッタリ合う盤を再生したら他のものには代え難い持ち味を発揮することも確かで、JBL のある種のスピーカーと音色的に共通したものを感じさせ、いかにもアメリカ的で屈託がない。ボディーはM44シリーズは全て同じものであろう。特に古い盤に使うと存在感のある音で鳴ってくれる ※ シュアー純正のSP針(2.5mil)は既に生産終了しているがJICO製のより太い 3.0mil のSP針(3,675円)は販売中。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 1.5g (0.75~1.5) 旧来の M 44 ○シリーズから切り替わった新製品だったが、スクラッチプレイに弱いということでどうやら DJ 達に不評だったらしく短期間のみの販売で生産終了になったモデルである。これもシュアーらしくカラっと明るく派手目の音だが、雑な感じは少なく音場も比較的広く大変聴きやすい上級機指向の製品だと感じた。コストパフォーマンスが非常に良いので入門用としても好適で、解像度は上級機程ではないにしても、楽しさと品位が両立していて充分クラシックを楽しむことができる。取り敢えずこれ一本あれば特に不満は感じずに済む筈だと思う。私はこのカートリッジが非常に気に入っているので、予備にもう一個持っている。DJ での使用を意識してカンチレバーに蛍光塗料が塗ってあるが、通常のオーディオで使用する場合も針の位置が容易に確認できて好ましい。 シュアーオリジナル交換針は既に生産中止で入手できないのが非常に残念だが、JICO の互換針は入手可能である。M44G 復活とともに消えてしまった製品だが、私としてはこちらを(交換針だけでも)継続販売してほしかった。 余談だが、昔のカタログでは同系列の SC35Cは「放送局等で使用する業務用カートリッジ」として掲載されていたが、現在ではDJ定番モデルと紹介されているのがちょっぴり悲しかったりする。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 --g (1.5~3.0)
78rpm 再生専用のカートリッジだが、本体は多分 SC35 シリーズと同じものだと思う。交換針(N78S)は M97xE, V15VxMR, M35S, M35X, M25C, SC35C, M92E, M94E, MP94E, M70BX, M111E, M91シリーズ, M92シリーズ(1975年以前), M44-7X, M44GX と共用できる。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 4.5g (4.0~5.0) 今は DJ 用として売られているが、嘗ては放送局用と紹介されていた。重針圧で針飛びしにくいため失敗の許されない放送局などの業務用として使われていたようだ。オリジナルのステレオ針が着いていない中古品(ボディーのみ)を安く買ったのでステレオ針での試聴はしていない。JICO の 78rpm 用針を購入してそれを装着して使っている。Shure の純正針は7000円くらいするが、JICOの本機に対応した互換針は半額以下であり、而も純正より針が太いのでコストパフォーマンスは圧倒的に高い。そういうわけで、個人的には純正よりも太い針の JICO 製を推奨したい。JICO はシュアーのカートリッジ用に 78rpm 用針を多数取り揃えているが、その中で SC35C 用のみが最大針圧 4g (他は 3g )であるため使い勝手が良い( 78rpm盤は回転が速いため、盤に反りがあると覿面に針飛びを起こす。それ故、針圧は少しでも重い方が有利なのである。もちろん限界はあるが)。そして何といっても針先径が 3mil というのが嬉しい。シュアー純正の 78rpm 用交換針は 2.5mil であり、その他のメーカー、例えばオーディオ・テクニカ、オルトフォン等の 78rpm 盤再生用カートリッジも皆 2.5mil と細い針先なので(特注品や、スタントンの 2.7mil を除く)、JICO が太めの 3mil を採用してくれたことは実にありがたい。実際に演奏してみると、2.5mil に比べて音の輪郭がくっきりと出るように思う。シュアー純正の針は細い上に針圧が軽い所為か盤の雑音を多く拾ったり音質も少し細身の傾向だが、JICO 製はそれに比して、記録されている音が盤のノイズから能く分離して聴こえ、その音も芯がありしっかりしていて本当に素晴らしい交換針だ。できることなら、3.5、4.0 mil のヴァリエーションを販売して欲しい。SC35C用は 3,150 円と安価であるにも拘わらず、しっかりとしたプラケースに入っており而も検査証まで添付されていて、同社が製品にかける熱意を強く感じることができる。MM 用の交換針は今まで何度も購入したが、ここまで丁寧な製品はなかったし、通販で送料、代引き手数料が無料で一体儲けが出るのかと心配してしまう程である。このような良心的なメーカーが存在するのは実にありがたいことだ。シュアーのオリジナル 2.5mil 針は通常7000円くらいするので、半額以下で入手できる太い 3mil の JICO 製互換針のコストパフォーマンスは非常に高いと思う。同社の製品をこれからも末永く使っていきたいと思う。 |
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MM 型 楕円針 標準針圧 1.25g (0.75~1.5)
楕円針の T4P タイプでユニバーサルアーム用取り付けアダプターつき。上記 M78S 用の交換針を装着できる。実売価格 |
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MM 型 無垢超楕円針 標準針圧 1.25g (0.75~1.5) 楕円針とラインコンタクト針の中間である超楕円(ハイパー・エリプティカル)針を搭載したカートリッジ。これはちゃんとしたオーディオ用のターンテーブルを初めて購入した随分昔に使っていたものだが、最近ヘッドシェルを交換して改めて聴いてみたら(テクニクスのシェルでは大人しく引っ込み思案になってしまう印象だが、テクニカの AT-MS11 だと音が輝いて溌剌としてくる。マグネシウム製のシェルと相性が良いと感じる)実によい音で鳴るので感激してしまった。超楕円針のおかげもあるのだろうと思うが、複雑な溝や内周でも歪まず澄んだ音を再生してくれる。ふくよかで暖かく、落ち着いた繊細さも持ち合わせていて、明るく朗々とした上品な鳴りっぷりの素敵なカートリッジだ。聴いていて心底楽しくなる音で、MM の良さはこういう鳴り方にあるのだろうと再認識した次第である。 V15 TYPE3 の廉価版だけあって、音には似通ったものを感じる。しかし廉価版とはいえ、当初のメーカー価格は23,500円だったから決して「安物」ではないことを付記しておく。 ※ JICO 製の交換針(S楕円針、8,400円)・ SP 用 3mil 針(3,675円)あり |
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MM 型 無垢 HE (ハイパーエリプティカル)針 標準針圧 0.75~1.25g 学生時代、アルバイトで稼いだ金で好みのフォノカートリッジを買い始めた頃には既に TYPE3 は過去の製品となっていて、初めて買ったシュアーの高級カートリッジは TYPE4 だったため、これは親父のお下がり品である。針先のバリエーションは年代によって数種類あるが、これは HE (超楕円)バージョンで黄文字である(初期の白文字に人気があるようだが本機も同じアメリカ製なので私としては色の違いには興味がない)。シュアーオリジナルの針先が破損していたため、JICO の SAS に交換した。以前、オリジナル針の時に借りて聴いていた音の記憶と SAS の音は大きく相違するということもなく、オリジナルのもつ音質を充分再現している上にラインコンタクト特有の精密感も加わってなかなか良い。オリジナル至上主義者は JOCO 製互換針を敬遠する傾向があるが、オリジナルが入手できない状況でこの音質なら自分としては全く文句のつけようがないし、本家、特に後年の墨国製針と比べても加工精度が非常に良いので寧ろ安心して使える。しかも音の好みによって針先形状を選ぶ事も出来るのは実にありがたい。デッドストックのオリジナル針と称して売られているものは仮令未使用の新品で針先の摩耗が全くなくてもカンチレバーを支えるダンパーが経年劣化している場合が多く、更に実態に見合わないプレミアがついているから決してお薦めしない。交換針は生鮮食品と同じく「生もの」なので、私には長期間死蔵されていた純正針が JICO の丁寧な作りたてを凌ぐとは思えない。どうしても純正じゃなきゃ嫌だという方は一種の博打なので自己責任でどうぞ。これはシュアー以外の絶版品の長期保管純正交換針にも言えることである。本機そのものは随分古い時代のものだが、今聴いても Hi-Fi かつパワフル、躍動感があって楽しい出音は非常に魅力的で、未だに根強い人気があるのも理解できる。後継機である TYPE4 はどちらかというと大人しく、繊細、上品、最新録音に対応するワイドレンジの方向に変わったが、TYPE3 の音にも捨てがたい魅力がある。某有名ジャズ喫茶で使われているという事もあってジャズに最適という評価が多いが、クラシックにも充分対応できる懐の深さを持っている。というより、クラシックに向かないと云うのは単なる先入観にしか過ぎないと思うのだが(発売当時は特にジャズにターゲットを絞っていたわけでもないし、クラシック再生のリファレンスとして使っていた人も多かった)。まあ、それでも自分としては TYPE3 より TYPE4 の方が断然好きではある。この TYPE3 の音に近いと私が感じているのが、これの廉価バージョンである M95 シリーズなのだが、あまり人気がないようだ。TYPE3 が欲しくても実勢価格が高くてなかなか手が出ない人にとっては、TYPE3 のノウハウを投入した M95 は中古価格も安く、TYPE3 に劣らぬ楽しい出音で実に良い選択肢だと思うのだが如何だろうか。
※ JICO 製の楕円針、S楕円針、 |
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MM 型 無垢 MR 針 標準針圧 1.0g (0.75~1.25) MR・マイクロリッジ(ラインコンタクト)針搭載の TYPE4 最終モデル(シルバー地に黒字で SHURE とプリントされている交換針ノブ)。これ以前(黒地にシルバーの文字で SHURE とプリントされているノブ)はハイパーエリプティカル針がついていた。V15 シリーズでもこの TYPE4 は、先代機と比べてよりフラット指向である。 ガンガンと迫ってくるような押し出しの強いタイプではないが、かといって細く弱々しい感じは一切なく、エネルギッシュな録音であれば、それをきっちりと出してくるところが素晴らしい。総体的に言えば、一点の曇りもないとても上品且つ綺麗で音楽的な表現が魅力的で、悪くいえば八方美人的な感じがなきにしもあらずだが、さすがはシュアーの V15 シリーズのバージョン 4 だけのことはあり、トレース能力が極めて高くどんな溝でもあっさりトレースしてしまうので安心して聴いていられる。音場も広いし解像度にも不満はない。クラシックも余裕でこなし、自分好みの音ということもあって購入当初から絶大な信頼をおいていて今でもリファレンスとして愛用している。まさにMMカートリッジの範である。これを買った時についてきた葉書を送ったらチェック用のレコード(シュアー社制作)が送られてきた。 【2018年6月7日追記】 久し振りに本機を聴いてみたがやはり本当に素晴らしいカートリッジだと改めて認識した次第である。ダンパーが硬化して駄目になっている針も多いようだが、私の個体に限っては大昔に新品で購入した当時のオリジナルMR針が未だに絶好調で、他のラインコンタクト針搭載カートリッジを全く寄せ付けないのには恐れ入った。Type3とも聴き較べたがクラシックに限らずジャズでも圧倒的にこちらの方が良いのにどうしてType3ばかりが人気なのかさっぱり理解できない。まあ、某ジャズ喫茶で使われているという評判が一人歩きして、ジャズに最適という明後日な方向の評価を見ているとオーディオというのはつくづく「耳」ではなくて「頭」で聴くものなんだろうなと思う。そのお陰で、もし本機が故障しても代替品が安価で入手できるのは有難い限りだ。勿論Type3も良いカートリッジに違いないのだろうが、シュアーのMMカートリッジで唯一どれを残すかと問われれば迷わずType4と答える。 ダイナミックスタビライザーという、盤の反り対策、埃除去と除電兼用のブラシがついていてとても便利なのだが、これを使うとブラシの拾った振動が本体に伝わって多少音が濁る。しかし、反り、埃、除電ともに効果が大きいので、使用するか否かはケースバイケースで判断すべきである。尚、ダイナミックスタビライザーを使う場合は、針圧を0.5g加算する必要がある。 本機にはシェルに取り付ける際に使う、ネジ穴を切った細長いアルミ製プレートとその上に重ねる同形の絶縁用あるいは保護用の薄い透明なプラスチック製のプレートが付属する(左欄の図を参照)。この 2枚のプレートは本体上部の溝(隙間)?に嵌るようになっていて、取り付けの際の手間を軽減するとともに、シェルに本体を強固に固定する役割も果たし、本体にネジの取り付け痕が残る事もない。なかなかのグッドアイデアである。ただ単にネジ穴にビスだけで本体を取り付ける場合と比較して、音がよりタイトになるように感じる。ただ、このプレートのネジ穴は通常のビスとはピッチが異なるので、シュアー純正のもの(あるいは同等品)しか使えない。また、ネジ穴が貫通していないタイプのヘッドシェルには使えない。これがあるとないとでは使い勝手が随分違うので、中古品を探す場合にはプレートの有無もチェックした方がよいと思う。アルミ板を加工して自作できないこともないと思うがねじ切り(タップ)が必要である。
シュアーオリジナルの交換針は残念ながら生産終了してしまったが、
日本精機宝石工業 (JICO) 製の
残念なことにこの V15 シリーズ唯一の生き残りであった V15VxMR も生産中止になってしまった( |
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MM 型 接合楕円針 標準針圧 1.75g (1.5~2.0) 明るく上品で非常に綺麗な音がするのだが、大編成のオーケストラなどでは低音が非常に充実した爆発的な力強い表現にも長けている。然もトレース能力が抜群に高いため内周の複雑な音溝でも極めて歪みにくい点は素晴らしく、余計な事を心配せず本機に全てを任せて安心して聴いていられるオールマイティーで非常に優秀な製品である。いかにもテクニクスらしい真面目な音で変な押しつけがましさは全くないし、かといって色気も充分に感じる事が出来る逸品だ。ボディーの形状を見ると T4P カートリッジの流用とも思えるがその性能は確かである。針は無垢かと思ってよく見たら接合で少し残念だが、無垢とか接合とかそういった次元を超越していて大変素晴らしいパフォーマンスを示す。メーカー標準小売価格(現役当時)は 15,000 円くらいでMMにしては少し高めだったがそれだけの価値のある製品で大変貴重な存在である。特にテクニクスのターンテーブルとの相性はずば抜けていてこれ1本あれば何でもこなせるだろう。兎に角大変優秀なカートリッジだ。 ※ JICO製、ナガオカ製交換針あり |
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MM 型 無垢楕円針 標準針圧 1.25g (1.0~1.5)
テクニクスのカートリッジは全体的に繊細で多少細身の傾向があるように感じるが、この MKII は意外に太めの音で、低域もよく出るし表情が生き生きとしている。しかし、こういうキャラクターにありがちな雑な感じは全くなく、総合的なバランスが非常によく親しみやすい音だ。MKIII と比べると若干甘く聞こえるような気はするが、聴いていて非常に楽しいので、実はこちらの方が好みだったりする。JICO の互換針は現在でも入手可能( |
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MM 型 無垢楕円針 標準針圧 1.25g (1.0~1.5) テクニクスは、振動系を軽くすることができる MM 型の方が性能のよいカートリッジを作れるという思想の元に MM 型カートリッジのラインナップを充実させ、持てる技術を注ぎ込んだ。上欄と同じ型番ではあるが、本体に挿入するマグネットの構造が MKII とは異なり、全く別物といってもよい程鮮烈で精密感に溢れ解像度も素晴らしいが、その反面多少冷たい感じがしないでもなく、もっと色気があればと思う。当時の最先端技術、所謂ハイテクを惜しみなく投入した凝りに凝った磁気回路で、各部パーツのスペックも超一流である。現在でも高性能 MM として立派に通用するリファレンス的カートリッジであり、更にブラッシュアップした後継機もあったが既に生産終了(互換針も入手できない)で、このような手間のかかった MM カートリッジはもう二度と現れないであろう。 MK2 と差し替え可能な互換針は入手できるものの、オリジナルとは素材や構造が異なるため真価が発揮できないのが実に残念である。 ※ JICOの 205CII 用針と互換性あり(本来の性能は発揮できない)。 |
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MM 型 無垢楕円針 標準針圧 1.75g (1.5~2.0) 定価はピッタリ 1 万円(交換針は 6,000 円)。明るく元気のある溌剌とした楽しい音だと思う。前にグングンと迫ってくるようなエネルギッシュな感じを受ける。同じ型番の上位機種 Z-1 は 4 チャンネル再生用機でシバタ針(ラインコンタクト針)がついているモデルだったが、本機は 2 チャンネル再生用の楕円針つき下位バージョン。更にその下位バージョンに円錐針の Z-1S がある(尚、ここでの「下位」とは販売価格の序列に準ずる)。下欄の MC-100E の処にも書いたが、ビクターのカートリッジには針先違いの派生バージョンが多く、基本的に型番の後に何も記号が付かないのはシバタ針(或いはラインコンタクト針)、 E (エリプティカル)は楕円針、 S (スフェリカル)は円錐(丸)針、最後に B (ボンデッド)が付けば接合針である。例えば Z-1EB とあれば Z-1 の接合楕円針付きモデルという事になる。私は本機のシェルリード線にビクターサービスのマニア向け(超ラボ)パーツ(ウレタン塗装リッツ線)を使用している(左の画像参照)。超ラボパーツには、シェルリード線の他に皮革製のターンテーブルシート、ケーブルの被覆や電解コンデンサーなどの電子部品の表面に塗布するためのカーボン入り塗料「スーパーブラック」などもあった。尚、本機はグランツのOEMのようである。 ※ JICO 製、ナガオカ製交換針あり |
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MM 型 無垢シバタ針 標準針圧 1.5g (1.3~1.7) 定価は22,000円(交換針は13,000円)。Z-1E とは対照的に薄味であっさりしたところがあり、曇りを感じさせないような大変綺麗で上品な音を聴かせてくれる。このカートリッジは 4ch 用ではないのだが高価なシバタ針が採用されている。シバタ針とは日本ビクターの柴田憲男氏によって開発された、もともとは 4ch 再生用の高域特性に優れた高性能針で、 MR (マイクロリッジ)、或いは ML (マイクロリニア)針などのラインコンタクトスタイラスの奔りである。シバタ針の所為か再生音が緻密で、歪みのない高度なトレース能力をもつ点は特筆大書すべきだろう。解像力にも全く不満はないし、これといって過度な自己主張をするわけではないのだが、しかし耳をそばだてて聴いていると時々図太い音が出たりして不思議な魅力を持っているカートリッジだ( Z-1 の血統故か)。これの廉価版 U-2E は楕円針モデルで交換針には互換性がある。 U2 用は針先に白いライン、 U2E 用は赤いラインが入っている。テクニクスのターンテーブルに取り付ける場合(52mm)、本体を一番引き出した状態がギリギリの寸法なので殆ど余裕がない。オーバーハングの調整には 6角レンチが必要だ。オリジナルのシバタ針モデルであれば推奨したいカートリッジだが JICO やナガオカでも互換針を出しておらず、良い製品であるだけに至極残念だ。 |
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MC 型 無垢楕円針 標準針圧 1.75g (1.5~2.0) 当時流行した(グランツやオーディオ・テクニカなどでも作っていた)針交換可能な MC カートリッジの中の一つ。定価は13,500 円で交換針は 8,000 円。この方式はコイルや針を一括交換するもの(ボディー側にはマグネットと交換針を挿入する接点部しかない)なので機構的にボディと交換針ユニット間で余分な接点が一つ増えるわけだが、出てくる音を聴く限りそのデメリットを全く感じさせない。切れ込みがよく非常に溌剌とした音である。解像力も申し分なく音場も広いので大変見通しがよい。しっとりとした表現は僅かに苦手かもしれないが、トータルでの性能は大変高く極めて優秀な製品だと思う。常用したいが交換針は既に入手不可能なのが本当に残念である。コイルを巻かなければならないので互換針も生産されていない。好きなカートリッジだったので予備にもう一つ持っている。こちらもビクターサービスの超ラボパーツ(ウレタンリッツ線)を使っている。 尚、同社の普及型ターンテーブル QL-Y33F に搭載されていた MC-100EB は、このカートリッジと共通のボディーで針がボンデッド(接合)になった廉価版。次の QL-Y44F に付属の MC-100IIEB は前面の青い半透明パーツが赤い不透明なものに、ボディーは黒色に変更されている。いずれも、周波数特性、出力電圧、針圧とも MC-100E と同じである。ビクター製カートリッジの型番で最後に B (ボンデッド)がつくものは接合針仕様である。また、 MC-100E 以外は単体での発売はなく全てプレーヤーの付属品である。針が摩耗した場合、交換針はどれも既に入手不可能なので、これらのターンテーブルをお持ちの方は残念ながらカートリッジそのものを交換するしかない。各ターンテーブルの仕様はこちらへ。 |
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MC 型 無垢特殊楕円針 標準針圧 1.5g (1.3~1.7) カンチレバー上の針先に近いところに極小プリントコイルが取り付けられたダイレクトカップル方式の廉価普及版。定価は 33,500 円。同方式の名器といわれている MC-1 や MC-L10、高出力タイプの MC-101E などとボディーの形が共通である(新製品になる毎にプリントコイルの位置は針先に近づいていき、ビクターは最終バージョンとして、遂に針の真上にプリントコイルを載せて振動伝達ロスをほぼ 0 にした MC-L1000 ( L は Laboratory の略)という名器を世に送り出して大いに話題となった。発売当時どうしても費用が捻出できずとうとう買えなかったが)。本機の針先は特殊楕円で、上級機程ではないにしても解像度も過不足無くよく鳴ってくれるし左右の広がりだけでなく前後の位置関係さえも明確に表現してくれるのでオーケストラなどを聴くとまるでサラウンドのような楽しさがあり、ヘッドフォンでもしっかりとそれらを感じられる独特の音場感は特筆すべきものだと思う。加えて、しっとりとした艶のある音が素晴らしく、一時期(アナログ最後期)はこればかり使っていた(現在は針の摩耗とダンパーの劣化を考慮して一年に数回使用するのみだが)。気軽にダイレクトカップルの良さが味わえる逸品だと思う。収納ケースは水晶玉を半分に割ったような形のプラスチック製で凝った作りのものだった。今改めてこのカートリッジを聴いてみても、昭和初期の日本ビクター蓄音機株式会社時代から連綿と続く音響技術の蓄積にはやはり並々ならぬものがあると強く感じる。 |
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MC 型 無垢コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 2.5g (2.2~2.8) 大変有名で息の長い MC カートリッジだから、今更詳しく解説する必要もないだろう。放送局仕様ということがカタログなどで大いに強調され、マニア心をくすぐられたものだった。最新のカートリッジに比較すればレンジ感は決して広大というわけではないし若干地味な印象だが、躍動感があって芯のあるしっかりした音だと思う。低音が痩せず帯域のバランスもよい。基本が業務用ということで非常に頑丈な作りになっており、ラフな扱いにもよく耐える。私のはかれこれ 25 年程前に買ったもので、いろいろと危ない目にも遭わせてしまったが、ダンパーの経年劣化も感じられず現在でも全く問題なく動作しているのみならず、高水準の再生能力は特筆すべき事だ。 とは言っても、このカートリッジの本領を発揮させようとするとかなりシビアに追い込んでいく必要があると感じている。買ってから初めて使った時には何だか寝ぼけた感じでつまらない音だと思っていたのだが、シェルを交換して細かく調整したらまるで別物のように生き生きと鳴るようになった。解像度も上がって音の分離が良くなるとともに響きが非常に深くなり、この製品が本来もつポテンシャルを充分味わう事ができたように思う。このカートリッジと同時に購入した DENON 純正のシェルは天板にゴムが貼ってある所為か音が甘くなってしまうし、オーディオ・テクニカのビスが貫通しないタイプのシェルでは、こじんまりとした軽い音になってしまったのだが、現在は同社の最後のヘッドシェル PCL-300 に落ち着いた。PCL-300 はよく吟味されており剛性が高く、DL-103 本来の良さを引き出してくれているように思う。このカートリッジは手をかければかける程素晴らしい音で鳴るので是非納得のいくまで吟味してほしいと思う。さて、この製品はアナログがオーディオの主流からはずれて生産が減った分値段も上がってしまったが、造りや音の良さを考慮すれば決して高価ではなくコストパフォーマンスは圧倒的に高い。アナログが衰退してしまった現在では寧ろ安価だと断言できる。コンプライアンス(カンチレバーの動きやすさ)などの基本的なスペック値から想像するほどトレース能力が低いわけではなく、ディスク内周のピアノの強いアタックも全く歪む事なく非常に綺麗に再現してくれるし、針圧が比較的重い所為か重心が低く安心して聴いていられるのは本機の持つ最大の長所だろう。スタイラスチップをカンチレバーに取り付ける際にダイアモンドの結晶方向にも最大限気を遣っており、まさにリファレンスというべき製品だ。デザイン的に地味に見えるが、実によく考えられて製作された本機に根強いファンがいるのも頷ける。カートリッジの選定に迷ったら、取り敢えず DL-103 を買っておけば間違いないだろう。 |
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MC 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 19g
カタログに載っておらず、一般ルートではなかなか入手できない(現在は新品では入手出来ず、針交換のみのようだ)が、秋葉原のラジオ会館に嘗てあった第一家庭電器のカートリッジ売り場で売っていたので購入することが出来た(上覧の DL-103 も同じ店で購入した)。第一家庭電器は現在は存在しない店だが、オーディオには非常に力を入れており特別なLPを自主制作したりして今改めて考えるとマニアには非常に有り難いショップだったのである。学生時代、某オーディオメーカーから派遣されて、万世橋交差点にあった第一家電の店(現在はセガの GiGO )の開店前準備でアルバイトした事もあった。1階の入り口付近にあったそば屋で昼飯を食ったなあ。(笑) その時一緒に仕事をしてお世話になった M
(T) 社(ピュアオーディオから撤退してブランド名も事実上消滅した)の人は今どうしているのだろうか。カートリッジ一つ一つにこのような思い出が詰まっているのではあるが、まあ余談はさておいて、もともと業務用で針圧が 19g という 78rpm 専用の特殊なカートリッジである。カンチレバーの先端にゴムダンパーがついているのでレコード盤の反りには滅法強く(縦振動を拾わないというメリットもある)、かなり反ってしまった盤でもその追従性は他の追随を許さず、針が全く暴れず安定したトレースを可能にしている点は、まさに特筆大書すべき本機の美点である。しかもモノーラル専用設計ということもあって重心の低いコクのある音で鳴る。針先のチップは 2.5mil と細いので(規格化された 1958 年以降のレコード用)、これがもう少し太いと戦前の古い盤のスクラッチノイズが更に軽減されるだろうが、レコード盤の状態にも依るので一概に太くすれば良いというものでもないのが難しいところではある。しかしそうは言うものの、同じ針先径のテクニカ AT-MONO3
SP やシュアーの M78S に比べると針音やビリツキが遙かに少ないのは、重針圧や針先端に取り付けられた縦振動抑制用のゴムの効果なのだろうか。針先径の細さに多少の不満は残るものの、その再生音は非常にクリーンである。出力ピンは 2 本しか出ていないから、音質の面からもそのまま片チャンネルだけで使うべきで、リード線を(左右両チャンネルで鳴らせるように)単純に分岐するとアースループを形成してハムの出る可能性があるので、そんなことをするよりもプリアンプのライン(モノ)出力を2分配した方が遙かにスマートで美しいと私は思う。それにしても、針圧 19g というのは通常のターンテーブル(アーム)には破格の数値である。Technicsのヘッドシェルには 4g の錘を搭載出来るものがあるが、元々シェル自体が軽いのでそれでも足りない位だ。オーディオ・テクニカの自重 18g の重量級ヘッドシェルでも使わないと規定の針圧をかけるのは至難の業ではあるが、針圧が重いだけあってトレース能力は抜群である。最近は小型のデジタルスケールという便利なものがあるので、これで規定針圧に合わせている。 兄弟機である銀色ボディーのモノーラル LP 用カートリッジ DL-102 の方は容易に入手できる。 78rpm 盤はレコードの保管状態によっては激しく反っている場合も多く、このようなレコード盤に対する DL-102SD の優秀なトレース能力については、下記動画をご参照下されば直ぐにご理解いただけるでしょう。このページでは表示スペースの関係で低解像度表示になっておりますが、YouTubeアイコンをクリックすると高解像度の動画をご覧頂けます。これ位レコード盤が反ってしまうと、軽針圧のカートリッジを使用した場合、特に 78 回転という高速回転下では間違いなく針飛びを起こしてしまい全くトレース不可能ですが、 19g という重針圧且つ縦振動抑制機構をもつ DL-102SD では特に音質に影響せずに難なくトレースしています。尚、針圧 19g というのは通常のアームやシェルでは対応できないので、テクニクス製ヘッドシェルの錘取り付け用捻子穴を利用してワッシャーを束ねてヘッドシェルに乗せ捻子で留めて重針圧を得ています。見た目は不細工ですが好きな重さに簡単に調節出来ます。 ; |
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MM 型 接合楕円針(0.3×0.8mil) 標準針圧 1.5g (1.2~1.8) ローマス全盛時代に作られた製品。大変小さいボディーにも拘わらず堂々とした音を出す。値段 (7800 円) から想像するような大雑把なイメージは全くなく、細かい部分をきっちりと出し、ピアノからオーケストラまでオールマイティーにこなす。歪み感がなくピアノの鋭いアタックもぼやけずによく再現してくれる。本体が非常に軽いので現用ターンテーブルの場合、重めのシェルでないとバランスがとれなくなる。重いシェルを使う事はローマスとは逆方向だが、結局のところ演奏出来なければ意味がないので仕方がない。交換針は下位機種の XL-MM1 と互換性があるが MM1 の針(橙色)を使うと精密感が後退して多少雑な印象になってしまい本来の良さが出ない。コネクターは独自の形状で付属の専用ケーブルを使用する。しかし、このコネクターが曲者で接触不良を起こすことがあるため、メンテナンスはしっかりと行いたい。 ※ JICO製交換針あり |
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MC 型 接合針 標準針圧 1.5g (1.2~1.8) 針交換可能で1万円を切ったMCカートリッジ。上位機種に XL-MC3、XL-MC5 があった。針交換といっても MM のように針先ではなく小型のボディーをホルダーから外してそっくり交換する方式。多少大人しい感じはするものの決して安っぽくなく、音に艶がある。独特の定位感(奥行き感)を持っていて、ピアノなどでは 1 音 1 音が音高に応じて全て違う位置から立体的に聴こえてくる面白さがある。目を閉じながら聴くとピアノのアクションがリアルに見えてくるようだ。 XL-MM2 と同様、ボディーが大変軽いため、取り付けるシェルを選ぶが、このカートリッジならではのユニークなキャラクターは捨てがたい魅力がある。交換針はディスコンだが、デッドストックをあと 2 個持っているので、ダンパーが劣化しないことを祈るばかりだ。 |
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MM 型 無垢楕円針 標準針圧 1.8g (1.5~2.1) これは、以前第一家庭電器が存在した頃、地元の店で購入したものである。これを買った時、自主制作の 45rpm LP をオマケとして貰って音が非常に良かった事を覚えている。当時 6 千円程度の安価な製品だが値段を感じさせない堂々とした濃い音。音場が左右によく広がって音に力強さがあり、尚かつ柔軟で細やかな面もちゃんと持っていて何を演奏させても全く破綻がない。響きの良さには特筆すべきものがあって聴いていて実に楽しく、全く素晴らしい。発売されたのがアナログ最盛期の終わり頃なのでこのような極めてコストパフォーマンスに優れた製品が作れたのだろう。安価にも拘わらず無垢の針を搭載しているところなどにこのメーカーの良心を感じる。真面目な出音でありながらウキウキするような楽しさも感じられるところがとても魅力的で、交換針は既に入手できないが永く使いたい製品だ。サエクにはもっと名の通ったカートリッジがあるが、これは隠れた名品かもしれない。 |
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↑ ケースと特製プレート Highphonic各製品の仕様(参考)
各機種共通仕様 |
MC 型 無垢超楕円針(0.1×1.2mil) 標準針圧 1.0g (0.9~1.1) ハイフォニックミュージックアートは、DL-103 の設計開発者である城井府吉氏が設立した会社で、現在は DL-103PRO というスペシャルバージョンや、昇圧トランス、フォノイコライザーなどを発売している(確か市販品とは外観が少し違う DENON オリジナルの DL-103 (PRO?)という、本当に放送局向けのカートリッジもあった筈で、ネットオークションなどで純正のプラスチックシェル付きのものを数回見て以来最近はとんと見かけなくなってしまった。それとも私の記憶違いか・・・)。 嘗てはカートリッジを 5 機種程(MC-D15、MC-A6、本機、MC-A3、MC-A3 MONO< MC-A3 のモノーラル版> ※各詳細は左欄内下の表を参照して下さい)発売していた記憶があるが、私が知らないだけでもっと種類があったかも知れない。その中の一つである本機はカンチレバーがルビーで出来ている(左下の拡大画像参照)。針先形状は超楕円で、製品カタログにはウルトラライン・マイクロスタイラスと書かれている。その名称からしてラインコンタクト針に非常に近いものと思われる。また、トレーシング歪のグラフも掲載されているが、針先の径が小さくなればなるほど歪が小さくなるようだ。ただ、歪とはいってもそれが音の「味」になる場合もある。いずれにしても貧乏人の私が持っているカートリッジで一番高価なものだ。(笑) これは秋葉原のラジオ会館地下の、今はなきオーディオショップ十字屋で買ったものである。適正針圧が軽く、出力電圧も低いので扱いにくさはあるが、レンジが広く歪みが極めて少なく上品で繊細、尚且つ力強さと芯のある密度の高い音を兼ね備えていると思う。高域に僅かな味付けを感じるが、サーフェイスノイズが非常に小さく独特の世界を表現している。硬調で、きっちりとピントのあったパンフォーカス写真を思わせ、ピアノの鋭いアタックなどではハンマーが弦に当たるさまが目に見えるような厳しい鳴り方で耳が痛くなるほどだ。しかし、倍音をきっちり出してくるので決して不愉快ではない。このカートリッジで聴く現代ピアノ作品は説得力があって実に魅力的だしピアノ以外、例えばオーケストラでもとてもクリアに聴かせてくれる非常にいいカートリッジだ。ボディーのデザインがシンプルで美しく、音質を予感させるものがある。金属製の手の込んだ精密な仕上げで、もし今同じものを作ったらとても当時の定価で売ることはできないだろう。但し、針圧が 1g と軽くスタイラスチップも極小のためちょっとした埃でもビリつきやすくなるなど神経質な面があるのでセッティングや盤のクリーニングは特に念入りにする必要がある。また、露出しているカンチレバーの長さ(高さ)が他のカートリッジに比べて短かく(低く)、ボディーの底面がレコード盤(特にリードインの厚くなっている部分)を擦りやすいのでアームの高さも細かく調整しなければならない。色々と手間はかかるがそれだけの価値はあり、非常に魅力のあるカートリッジなので是非再生産してほしい。 本機は綺麗な特製金属プレートにマウントされ宝石箱?のようなケースに入っていて、周波数特性を実測したブリューエル&ケアのデータシート(グラフ)と掃除用ブラシが付属する。デザイン的に本機と統一されたハイフォニック製のヘッドシェルも買ったのだが現在行方不明。(^^; |
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MM 型 接合コニカル(円錐)針 標準針圧 3.0g (2.5~3.5) ナガオカのフォノカートリッジの中でも最も安価な製品である 【追記】 このカートリッジに惚れ込んでいるので、実は最近デッドストックの新品を入手した。最終型の黒色肉厚ヘッドシェルなので銀色ヘッドシェルの前期製品と比較して聴くのが楽しみなのだが、取り敢えず永久保存品として購入したので勿体なくてまだ聴いていないのだ。何れ決心がついたらご報告します。(^^; 本機の針をレコード盤の音溝に落として再生が始まった瞬間、値段や外観から想像していた音のイメージが木っ端微塵に吹っ飛んでしまったのは、次項の同社 MP-11HJ が少し大人しい傾向なのとは対照的に、実に生き生きとしていてメリハリが効いており、聴いているとそれに合わせて躰を動かしたくなる程楽しい出音だったからである。接合円錐針でありながら、解像力やトレース能力も明らかに価格を遙かに上回る実力を備えており、再生周波数帯域及びダイナミックレンジも過不足無く、総体的に非常に澄み切った音で内周でも歪みも殆ど無く、ピアノの強いアタックでも破綻しない。多少低音が薄めな点はあるものの音場も充分広く、クラシックを余裕で楽しめる。それにしてもこの性能で、ヘッドシェル込みの実売価格が3,000~4,000円とは安過ぎる! コストパフォーマンスは圧倒的だ。付属のヘッドシェルが少しチープな感じなので、もっとしっかりしたものに交換したら更に音が良くなる可能性はあるが、自分は基本的にオリジナル尊重主義者であり、付属のヘッドシェルでも充分優れた音質で満足しているのでこのままデフォルトの状態で使い続けることにした。ナガオカの製品開発力のみならず、優れた製品を安価に提供してくれる姿勢は全く素晴らしいという一語に尽きる。 余談だが、本機は交換針ノブの色とレタリングを除いて英国の名門 Goldring 社の ELAN 及び ELEKTRA に酷似しており、それらにも Made in Japan の表記がある事から想像すると、どうしても本機の OEM 製品ではないかと考えてしまう(スタイラス保護カバーも同じ形である)。"ELAN"という単語は「気力、鋭気、活力」といった意味で(本機と、ELAN や ELEKTRA のボディー<コイルなどの内部構造>が全く同一であるかどうかを確認した訳ではないしその保証も出来ないが)、自分の印象とも一致するのはなかなか面白い。本機の持つ素性の良さが英国の蓄音器時代からの老舗にも認められたのだろう。スタイラスにも物理的に互換性があるようだし、おそらく ELAN と ELEKTRA の交換針は Goldring 社の独自発注仕様で生産されているだろうから、本機にそれらの交換針を装着すれば Goldring の音も楽しめる筈である。本機のオリジナル針は優れた実力を持っているけれども、もしそれに飽きるようなことがあれば気分転換に Goldlring の交換針を使ってみるのも一つの手だろう。そういう意味でも「一粒で二度美味しい」カートリッジだと思うし、自分としては明るく活気がある本機は下欄の MP-11HJ よりも好みの音なのである。 |
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MP (MM) 型 接合楕円針 標準針圧 2.0g (1.8~2.3) ナガオカ独自のムービングパーマロイ型で MM 型と同等に扱える。普通の MM はカンチレバーの根元に磁石が付いており、カンチレバーの振動とともに磁石が動くことによる磁力線の変化がコイルに作用して発電するのだが、この方式は本体に磁石とコイルがあって、その磁気回路内でカンチレバー即ちパーマロイ(磁性体)の棒が振動する事によって磁石からコイルに届く磁力線が変化して発電するというものである。この製品はナガオカの自信作ということらしいので、どんなものか実際に購入して聴いてみた。僅かに薄味ながら明るくスッキリとした鳴り方でよく分離して見通しがよく、歪みが大変少ない透明感のある綺麗な音である。ローコスト品にありがちな荒さは全くなく、定位も良いしレンジも充分で、どの部分をとっても手抜きがなく真面目で非常に優秀な製品だと思う。付属のヘッドシェルは嘗てジュエルトーンブランドで発売していたものと同等品(カートリッジ専業ブランドのアントレーから発売されていたシェルもほぼ同じものである)で質が良くコストパフォーマンスは非常に高い。ブラインドで聴いたらこのコストだとはわからないだろう。交換針は 2500 円と安く、気軽に常用出来るのも嬉しい。オプションの 78rpm 用の交換針と差し替え可能、しかも径が 3.0、3.5、4.0 ミルと 3種類もあるので、レコード盤の状態に合わせて使えるのも魅力。しかしながら本機は生産完了となり後継機 MP-110H が発売されたので、交換針は MP-110H 用を共用するようだ。本機のボディーとは色が違う( 110 はより黄色っぽい)ので、見た目が不細工になりそうだ。但し、 78rpm 盤専用として専用針をつけた本機は継続販売されるようである。 さて、ナガオカは交換針やアクセサリーメーカーとして有名だったため、アナログ全盛期当時からオーディオ専業メーカーのカートリッジ製品と比較して一段格下に見られていたような処があり、オーディオ雑誌のテストレビューでも同社のカートリッジが採り上げられることは非常に少なかったように記憶している(雑誌に載るようなオーディオ評論は結局は裏で金が動いているのであって、その製品に対する正当な評価とは限らず殆どは全くアテにならないと痛感している。文章が上手い人はそれだけで引き込んでしまう魔力を持っているから要注意だ。誰がどう言おうと先入観を持たずあくまでも自分の耳を信ずるべし)。そういう事もあって、同社の製品は大したことないのかなと勝手に思い込んでいた。第一印象というかイメージとは恐ろしいものだ。まさに耳で聴いているのではなく「頭で訊いている」証左であろう。本機のように地味ながら優れた製品があるのに実に勿体ない気がするし、上位機種も使ってみたくなった。また、ナガオカの自社製カートリッジのカタログには針先が接合か無垢かを明記してあり、その点でも非常に好感が持てる。 よくよく考えてみれば、互換針メーカーは一種類だけではなく多岐に渡るカートリッジに対してオリジナル針の音質を損なわずに交換針を作らなければならないわけで、多数のカートリッジの構造に通じている必要があるし、差別化を図るためにオリジナルにはない性能を付加することもある。それ故、非常に高い技術開発力を要求される筈だし、その技術をもって作られたカートリッジが「取るに足らない」製品であるわけがないのである。仮令デザイン的に垢抜けていないにしてもだ。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 2.25g? (1.8~2.5) このカートリッジは大手家電メーカー・三洋電機製(嘗てのブランドネームはオットー、かなり本格的で優秀なシステムを発売していた.。既にパナソニックに吸収され家電メーカーとしては消滅した)の普及型レコードプレーヤに付属していたもので、 SANSUI : SN-41(A) や SHARP : CART-103 と同じもの(交換針はそれぞれ共通で使える)。 GLANZ (ミタチ音響製作所・現ハマダ電気)の OEM のようである。当時の普及型の音は一体どんなものだったのだろうという興味から、ネットオークションで入手してみた。ヘッドシェルはブランドネームのロゴ入りオリジナルのものでプラスチック製(指かけは金属)。そのため重量が軽すぎて、そのままでは常用ターンテーブルのアームに取り付けられなかったので、錘として金属製のプレートをカートリッジとシェルの間に挟んで取り付けた。念のためSUPEXの消磁器で消磁してから試聴した。特にミストラックすることもなく結構細かい音を出し低域も充分なのでしっかりした音という第一印象だ。カートリッジとしての素性は良いと思うのだが、音場はちょっと窮屈な感じがするし、レンジもそれ程広くはない。ヘッドシェルがプラスチックであるためか、それともカートリッジそのものの癖なのか、若干余計な付帯音がまとわりつく傾向があるので精密感や透明感は程々である。歌謡曲やポップスだったら特に不満も出ず楽しく聴けると思う。というか、そういうジャンルの音楽向けにチューニングされているような気がする。特に歌謡曲などは特性的にフラットを目指したHi-Fi指向のカートリッジよりもある程度「音質的に作られている」方が楽しく聴ける場合が多い。交換針(互換品)は今でも売っていて、ナガオカ ・ 75-50 (楕円針)、JICO ・ ST-50D (丸針と SAS 針 2種)、A'pis ・ ST-50DED(楕円針)が容易に入手できる。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 3.5g? (3.0~4.0) 20~20,000Hz 7.7mV ベスタクスの DJ 用カートリッジである。ベスタクスの製品の殆どはDJ向けだが、LP レコードを自分で作ることが出来るカッティングマシンを安価に(といっても 100 万円以上するが、プロ用はそれこそ何千万円もする)発売したりとなかなか意欲的なメーカーである。このカートリッジはコニカル針だが、VR-7E という楕円針バージョンもある。本体は同じで交換針だけが違うようだ。ということは、VR-7SP という 78rpm 用のカートリッジの交換針も使えるかも知れないと期待して、安価に売っていたものを購入してみた。本機は GLNAZ の MM 型カートリッジ MG-2S に酷似しているので、旧 GLNAZ の生産設備をどこかが買い取って再生産しているのだろうか。 カタログの謳い文句から想像する程低音が強烈な訳ではなく(とはいえ、ベースやドラムスの音は良く出る)バランス的には良好である。僅かに音が丸くなる傾向を感じるが、逆にいえば神経質なところがなくて伸び伸びしている。このカートリッジのコンセプトからクラシック向きではないにしてもポピュラー、歌謡曲には良く合い、音楽を楽しく聴かせてくれるカートリッジだと感じた。しかし、これを同社のリスニング用ターンテーブル BDT-2500 というベルトドライブでフォノイコライザー内蔵機で聴いてみたところまた違った表情を見せた。内蔵フォノイコと相性がよいのか、ポピュラー、ジャズは勿論のことクラシックも充分いけるし、歪みがなく大変上品な音で鳴る。一番印象的だったのは、他の音にマスクされがちな今まであまり気に留めていなかった和音が鮮烈に聴こえてきたことである。フォノカートリッジとフォノイコライザーのコンビネーションは大変重要であると改めて感じた。 Vestax社は2014年12月5日に倒産しました。嘗て存在したホームページ上の質問フォームから製品について尋ねたら直ぐに丁寧な返信があり、大変誠実なメーカーだっただけに本当に残念です。 |
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VM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 3g? (2.5~3.5) 3.5mV まるでアメリカ・ヴィクターの蓄音機のような型番である。VV は Vinyl Vitamin の略で 44 は勿論シュアーの M44 に肖ったのだろう。最初はドイツ語風にノイと読むのかと思ったが、ヌー( IDE corporation )という DJ 機器メーカーの製品で、同社の DD-1200 というターンテーブルや AMERICAN AUDIO ( アメリカンオーディオ) の DTI1.8 という安価なターンテーブルに標準装備されているものだ。単品でも販売しており、GEMINIのCN-15 も同じ製品である。前面にオーディオ・テクニカのマークが堂々とプリントされているので同社の OEM 製品であることは間違いない(AT3600と同等品と思われる)。この手の廉価な VM ( MM ) 型カートリッジをマイナーな新参メーカーが新規に設計製造することは設備投資の面から考えてもまずあり得ないので、殆どが既存メーカー製品の OEM ということになる。有名メーカー同士で OEM 供給している例は従来から決して珍しいことではない。本機の税込定価は 4200 円だが実売価格は半額以下である。VV-44 のネット上の画像を見た限りでは、オーディオ・テクニカのターンテーブル AT-PL30 (現行品は AT-PL300 )に付属している交換針の形状と酷似していたため、実売価格が安かったこともあって物は試しにと購入してみた。実際に届いた製品を確認したら、左欄の画像のようにカンチレバーの根元から針先まで黒いゴム?がコーティングがしてある点や、各部の形状や寸法など PL-30 と同じ物だった。VV-44 の交換針は公式には「用意されていない」ことになっている。つまり「使い捨て」という訳だが、オーディオ・テクニカのターンテーブル用交換針 ATN-3600L を付けることが出来る。交換針が存在するのに使い捨てとして売られているのは、発売元とOEM供給元との間の大人の事情(たとえ製造元が同じであってもOEMで別メーカーの製品として供給された場合はオリジナルメーカー(供給元)に製品サポートの義務は一切発生しないし、供給先(発売元)のメーカーはOEMされた商品を売り切ってしまったらサポートは全くしないという場合が殆どなので、消費者側は自己防衛策としてその辺の事情を充分考慮した上で賢く商品(及び部品・消耗品)を入手して欲しい(笑))と、本体の実売価格より交換針の値段の方が高いからだろうと思われる。決して悪いカートリッジではないので、VV-44 をお持ちの方は、針が消耗しても捨てることなく、ATN-3600L を用意して是非とも末永く使って頂きたいと思う。素性の良い本機を針一本の使用だけで捨ててしまうのは勿体なさ過ぎると思う。 さて、このカートリッジの聴き所は何といっても、安価だが音質がよいと評判のターンテーブルに付属する(外すことが出来ない)専用カートリッジを他のターンテーブルで使ったらどんな音になるかということだろう。オーディオ・テクニカのマグネシウム製ヘッドシェル AT-MS11 に取り付けて試聴してみた。 分離は非常に良好で歪み感も大変少なくクリーンで、如何にもVM型特有の元気な音だが、カンチレバーにコーティングされた黒いゴム状のものの所為だろうか、音が多少丸くなる感じがあり、奥行き感も狭くなり僅かにコンプレッサーをかけたような音の出方をする。正直なところ、ダイナミックレンジの広いクラシック音楽の再生には少々苦手な部分もあるが、逆にポピュラーや流行歌に対しては本機のもつ元気なキャラクターが生きてくるように思う。AT-PL30 で再生した場合と音の印象が若干異なるが、PL30 の方は内蔵フォノイコをはじめとしてトータルで音作りがなされているのだろう。いずれにしても実売価格を考えれば、なかなかよくできているカートリッジで全く文句のつけようがない。所謂、コスリの練習専用に使うだけでは勿体ないので、是非リスニング用にも活用して欲しいカートリッジだ。 尚、海外では78rpm盤再生用に ATN3600-78 という交換針( 2.5mil )もあるようだ。海外の 78rpm 盤愛好家の層は日本に比べて遙かに厚いということを思い知らされる。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 針圧 2.5~3.5g アメリカ・Numark社(1971年創立)が販売する廉価なフォノカートリッジで米国では15ドルくらいで売られている。ひょんな事から入手して全く期待せずに聴いてみたが中々良いカートリッジだと感じた。自分のはNumarkオリジナルヘッドシェルHS-1付きだがそのままだと軽過ぎるのでテクニクスのウェイトをカートリッジとシェルの間に挟んでいるが、ウエイトとシェルの形が誂えたようにピッタリと重なり合うので細身のシェルではあるがウエイトがはみ出して不格好になる事もない。 芯圧3gで聴いているが音質は外観やコストからは想像できない位良い。特にピアノは音の芯が確りと感じられる。さすがに音場の広さや音の深みまで求めるのは酷だと思うがオーケストラもなかなか良く鳴らしてくれるしトレース能力も悪くない。純正交換針は2個パックで3000円くらいでコストパフォーマンスが良い。因みにスペックは以下の通り。 Frequency Response: 20 Hz -18,000 Hz |
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MM 型 接合コニカル(円錐/丸)針 標準針圧 4g (3~5) オランダの TONAR International というメーカーが発売元の製品で日本国内では交換針やカートリッジの老舗であるナガオカが輸入販売しているコンコルドタイプのカートリッジである。ペットネームの通り、バナナを思わせる黄色いボディーにバナナの絵が描かれていて可愛らしいが、実は歴としたオルトフォン社の製造である(底面にロゴマークがキッチリと表示してある)。付属のケースは実にしっかりしたもので、カートリッジキーパーとしても優秀である。定価は 16,800 円だが、たまたま近所の家電量販店のオーディオコーナーを覗いたら 1,980 円という信じられないような超破格値で売っていたので勿論即買いした。(笑) さすがにフォノカートリッジの老舗だけあって実にしっかりとした作りで、オーバーハングもテクニクス標準のピッタリ 52mm、しかもタッパが高いので SL-1200mk4 のアームに取り付けると、標準装備のターンテーブルシートでアーム高さ調節つまみが 0mm 位置で丁度アームが水平になるので本当に気持ちがよく、通常状態ではカートリッジが前のめりになりやすい1200シリーズでこの安心感は何物にも代え難いのである。 見た目や DJ 用ということで大味な音を想像していたのだが、実際にレコード盤をかけてみるとよい意味で完全に予想が裏切られ(笑)、細かいところまで実によく再現し、周波数レンジ、ダイナミックレンジとも充分に確保されており、コニカル(円錐)針とはいっても設計が良いと見えてトレース能力が抜群に高いのでピアノの強いアタックやオーケストラの強音部分でも歪まずに本当に綺麗に「音楽」を聴かせてくれる優秀な製品である。後述の逸品 OM78 も含めて長年研究され尽くしたオルトフォン・サウンドなのだろう。中級 MC と比べても全く遜色なく、クラシック音楽のリスリング用途にも全く問題なく使える極めて良質なカートリッジだ。もし本機を定価で買ったとしてもコストパフォーマンス(性能対価格比)は充分に高い。スタイラスはオルトフォンのコンコルドシリーズ、OM シリーズ等と互換性があるので、いろいろと交換して聴き比べを楽しむことが出来る点も非常によい。コニカル(円錐)針でここまでの音を聴かせてくれるのは、やはり当製品が能く造り込まれており、表向きは DJ 用とはいっても決して手を抜いたものではないと実感した次第である。本機を DJ 用途のみに使うのは実に勿体ないので、是非ともあらゆる音楽ジャンルのリスニング用途にも活用してほしいと思う。特にポップスには本製品が持っている快活な音質が非常に魅力的でハッとさせられる。生真面目さとスペック至上主義の日本製品にはない懐の深さを感じさせる大変優れた製品である。 【追記】 OM78 用のスタイラスを装着して聴いてみたが、OM78 とほぼ同等の実力を発揮した。本機の音質評価としては後述の OM 78 SP カートリッジと殆ど同じであり、本機をお持ちの方は交換針( Stylus 78 )さえ入手されれば本機で 78rpm 盤を過不足無く聴く事が出来る。 |
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MC型 無垢楕円針 針圧 3~5g 同社往年の銘カートリッジSPUの忠実な復刻版である。現行機種の SPU Classic GE MK2 とは周波数特性、コイルインピーダンスなどが異なっている。現代のカートリッジに比べて本体の重量、コイルのインピーダンス(2Ω)、針圧の値などに使いにくい面があるし(低インピーダンスという方向性は音質の面からは決して間違ってはいない)、製品の発売経緯から古色蒼然たる音色を想像していたが、実際に聴いてみたら意外にもハイスピードで現代の最新カートリッジと較べても全く遜色がない。大方の評価から低音が強烈なイメージもあったが現物を聴いてみると必ずしもそんなことはなく、極めてバランスがよく整っている。音場空間に隙間無く全て音がぎっしりと詰まっている点は特筆すべきで、これを聴いてしまうと他のカートリッジが淡泊に聞こえてしまうと感じた。とはいっても決して暑苦しい音では無く、豊かな音楽性溢れる実に爽やかな音だ。トレース能力も設計が古い割には決して悪くなく内周でも歪みにくい。この辺は楕円針と円錐針との差はあるが、古典的カートリッジであるデノンのDL-103と似ていなくもない。濃厚でありながら現代性も確りと内包していて、SPUならではの独特の豊穣な世界があるので、嵌まると病みつきになりそうだ。オルトフォンの純正トランス T20MK2では非常にこってりした濃厚な味わい、テクニカのトランス AT660T/OCC の3Ωポジション受けは比較的さっぱりした現代的なイメージ、ヘッドアンプ受けでは純正トランス程ではないもののこってりした感じだった。甲乙つけがたいが、自分としてはテクニカのトランスの音が好みである。無論これは私の環境での結果で他の環境では大いに異なるだろう。トランス(ヘッドアンプ)、フォノイコライザーアンプを更に上級なものに替えれば更に素晴らしい音がするのだろうが、私の決して高級とは云えない環境でも本機の良さは充分に味わうことが出来た。未だに熱烈なファンがいるのもよく理解できる。独特の個性を持った素敵なカートリッジだ。私は所謂ヴィンテージものには懐疑的なのだが、さすがは老舗オルトフォンだけのことはあると見直した次第。 |
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MM 型 接合コニカル(円錐)針 標準針圧 2g (1.8~2.5)※ ※ 針圧については本機に添付された説明書と 本国 WEB サイトの値( 1.75~2.25g )が異なるが、添付説明書の方を優先して表記した。 ボディーは他の OM シリーズカートリッジと同じでステレオ仕様だが、針先は 78rpm 用に開発された Stylus 78 が取り付けられている。生産が終了した本機の後継機として同社の新しいMMカートリッジシリーズ 2M の完全モノーラルバージョン 2M 78 が発売されている。 OM 78 の交換針 Stylus 78 は Super OM、OM、OMP、TP とコンコルドシリーズに使えるので(オルトフォンホームページの公式情報)、同様に針先を Stylus D 25 M に付け替えればモノーラル LP 用としても使える。 本機 OM78 は 78rpm 再生用としては安価だしボディーもステレオ共用ということで全く期待せずに購入、試聴してみたのだが、予想に反してこれがなかなか素晴らしいパフォーマンスを示してくれた。針先径はメーカー公称値 65µm=2.56mil で径が小さいにも拘わらず、古い喇叭吹込盤から最後期の電気録音まで殆ど問題なくオールマイティーにいけるのは流石はフォノカートリッジの老舗、オルトフォンだけのことはある。針自体が 78rpm 用として充分に考慮されて設計製造されているのだろうと思うが(他の 78rpm 用のカートリッジと比較してチップのタッパが高い)、再生時のEQの補正量が少なくて済み、そのままでも通常の RIAA フォノイコライザーでバランスの良い音を奏でてくれるし、MM 型なので出力電圧も高くて非常に使いやすい。特筆すべきは、傷んだレコード盤に強い事で、例えば日本のマイナーレーベルで元々録音状態が悪い上に蓄音器でかけまくったため音溝が白く潰れて他のカートリッジではビビって聴き難い箇所も、かなりビリツキが軽減される上に明瞭度も高いので大変に聴きやすい。細い針先径から考えるとこの点は意外だし、この点は自分が所有している 78rpm 用カートリッジの中ではトップクラスの性能でコストパフォーマンスは非常に高い。最大針圧は 2.5g と軽いので、ちょっと無理をして 3.5g 位までかけてやると反りのある盤でも結構頑張ってトレースしてくれる(メーカー発表の規格値を超えるので決してお薦めしないし、勿論トレース能力に限界はある)。状態の良いレコード盤に対しては、何といっても針圧が軽いのでダメージを与えずに何度でも好きなだけ高音質で安心して演奏できるのが有り難い(モダンフォノカートリッジでは異端ともいえる重針圧< 19g > の DENON DL102SD で演奏すると実際に摩耗してしまうレコード盤があるし、喇叭吹き込み盤やカッティングの悪いリードアウトの溝で針飛びしてレーベルを傷つける場合もあることを付記しておく)。 久しぶりに色々な点で大いに満足でき、充分メインで使える実に優れた製品に出会う事ができて嬉しい限りだ。78rpm 盤を聴くのが心底楽しくなるカートリッジである。もっと早くから導入していれば良かったと思う。本機の性能の高さから想像するに、同等の針先を備えた同社の最新完全モノーラルバージョンである 2M 78 や更に高価な MC 型カートリッジ CG65 Di MKII にも大いに期待が持てる。本機のお陰ですっかりオルトフォンファンになってしまった。(笑) 尚、ネットを検索してみると、所謂インディーズでSP復刻CDを発売している某氏のブログに、本機は日本総代理店から性能がダメだと宣言されたような記述があったが本当なのだろうか(少なくとも私は復刻盤の制作に関する限りはそのブログ主とは経験(年季)の差が相当あると自負してはいるが)? いくら何でも発売元の日本の輸入代理店が自社製品を貶すようなことは無いと思われるのだがどうなんだろう。その某氏が発売している復刻CDを実際に聴く限り、技術面で私はかなり胡散臭いと思っている。いずれにせよ信用に足る情報では無いとは思うので、そんな輩に本機が貶されていると思うと非常に腹が立つのだ。これは勿論私自身の永年の経験による判断なので、これとて鵜呑みにされないようにご自分で本機を入手し判断されるように切に願う次第ではあるが。 【追記】 交換針の互換性があるので本機に tonar banana のスタイラスを取り付けて聴いてみたらこれが実に素晴らしい結果だった。丸針でありながら、音の美しさ、分解能、音場の広がり、高域の再現性、帯域バランス、繊細さなどの各要素が非常に高いレベルで融合しており、クラシックの室内楽やピアノなどを聴くと音楽の深みを十二分に表出していてオリジナルの banana に、決して負けていないと感じる。実は、レコード盤に針を落として音が出た瞬間には興奮して、MM, MC を問わず手持ちの他のカートリッジなど全て不要だと思ってしまったくらいだったのだ。本機は他の OM シリーズのボディーと同等品だと思うが実によくできたカートリッジで、さすがは老舗のオルトフォンである。元来ステレオ用なので、ステレオ LP 盤の再生も 78rpm 盤の再生も針交換だけでこれ1本でいけるのは実にありがたい。 |
Technics SL-1200mk4付属シェルの表示
画像の通り、シェルの天板(上)側左がL(ホット)、右がR(ホット)、レコード盤(下)側左がEL(Lコールド)、右側がER(Rコールド)になります。
当サイトにご来訪頂いているアナログファンの方々には蛇足かも知れませんが、ボンデッド(接合)針と無垢針の違いは上図の通りです。接合はコストダウンのため金属製台座という下駄を履かせてレコードの溝に触れる最小限の長さのみダイヤのスタイラスチップを使用しています(1万円程度までの製品は殆ど接合針と考えてよいと思います)。金属製の台座にチップが接着されているので、実効質量が増加して悪影響が出たり、針先チップ→接着剤→台座→接着剤→カンチレバーという風に伝達経路上の介在物が増えることによってコイル、或いはマグネットまでの振動伝達に僅かながらロスが生じたり、針を音溝に落とす際に雑な扱いをしたりクリーニングの方法が悪いと接着が剥がれてスタイラスチップが外れたり(針先が無くなったり)します。カンチレバーが折れていないのにレコードが演奏できない時は針先が付いているかどうか確認してください。私自身は接合針を飛ばした経験はないのですが、ターンテーブルを家族に貸したら付属カートリッジの針先を見事に飛ばされたことがあります(苦笑)。 無垢(ソリッド)針は無垢のスタイラスチップをカンチレバーに直接植え込んで(接着して)いるため接合針よりも性能がよく、またどうしてもお金がかかるため比較的高価な製品にしか採用されません。
最終更新日:2018, 6, 7